茶は、《日常茶飯》事などと言われるように、ごくありふれた出来事として認識されています。「茶など如何?」と喫茶店に友人を誘い珈琲を飲む。真の茶の姿は解りにくくなっているようです。本講座では、茶の歴史・作法を使用した器と共に、沢山の映像資料を用いてわかりやすく解説いたします。
茶碗は言うまでも無く茶を喫するための碗であり、碗にはその使用目的によって飯碗とか汁椀とか区別を付けています。日本ではどういう訳か、茶を喫する碗も、茶碗、食事の時の飯を盛る碗も茶碗です。食器棚中には茶碗ばかりです。後の時代になると、日本人は何と茶好きな民族と思われるに違いません。
古代、碗の祖型が瓢箪などにあると言われ、その発展形には木製椀があり、更には塗り椀があります。丈夫な割に安価な瓦器の碗は、大都市を除く地方一般庶民では唐代の中頃まで使用していたと推察しています。その頃都の長安を魁として茶文化が流行し、薬でもあった茶を喫する為に青瓷碗を用いることが広まりました。全国的に硬い瓷器の碗が普及し、飲酒や喫茶だけでなく食事にも利用されるようになりました。以後半世紀の850年頃までに、木製椀や瓦碗の使用がすっかり忘れ去られています。茶文化の普及が瓷器碗の生産を高め、暮らし中の瓷碗の位置を高めています。もしも茶文化の普及がこの時代になければ、《やきもの》の歴史ははるかに遅れることになったことでしょう。